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生んでくれてありがとう

お父さん、お母さん、急にこんな手紙を書かれて、驚いていることでしょう。
まだ生きて20年とちょっとしかたってない僕だけれども、
今、あらためて、これまでの生をふり返って二人に感謝の気持ちを伝えようと思います。
たぶん、本当は一生かけて体現していかんといけんことだから、まあ、途中経過みたいなもの。
なるべく正直に伝えるよ。
お父さん、お母さん、生んでくれてありがとう。
僕が生まれたときは、“ていおうせっかい”だったから、お母さんはすごくいたい思いをして僕を生んでくれた。
一度、僕のお兄さんになる予定だったはずの赤ちゃんが、流産で亡くなっていたから、
僕が生まれたとき、お父さんとお母さんは心の底から喜んでくれた。
たぶん、その喜びって想像を絶するんだろうな。僕も、父親になったとき初めてその喜びがわかるんだろうな。
まだわからない感覚かもしれないけれど、そんな感情をもって、僕をむかえいれてくれたんだなぁ、
と今あらためて思うと、嬉しいし、そんんあに喜ばれる命として、
ちゃんと二人に親孝行しとるかと考えると、情けなくなるなぁ・・・
僕は一人っ子だったから、すごく大切に愛されてきているし、たぶん、そうとうな迷惑もかけてきてると思う。
生まれてから6歳になるまでのアパート暮らしが懐かしいな。
お母さんも、あのときはとても楽しく幸せだったとよく言う。
赤い建物、小さい頃、おぼれかけた深いお風呂。
貧乏だったけども、お父さんが苦労してはじめた会社をやっと軌道にのらせて、
そして手のやける甘えん坊の子どもとの、三人暮らし。
ささやかだけれども、生きている喜びがいっぱいあふれていた。
6歳までの記憶がやたら多いのは、その“しあわせ”をおすそわけされたからかもしれないね。
小さい頃から、お母さんが離れるとよくないていたように思う。
車の中で一人残されて泣いていたなぁ。「ほめられたい」という思いが強かったのかもしれん。
一生懸命、自分からやたら勉強しとったのは、そういう意味で、今も、甘えん坊なところは、
まだ直っとらんかもしれんなぁ。いくじがなくて、言い訳がましくて、勇気がなくて、すぐ逃げたがる、
けど目立ちたいプライドも父親ゆずりで、今日まで迷惑かけて、手をこまねいて、
ずっと子どものままかもしれん。そう考えると、とくにお母さんにはしんどい思いさせてるなぁ。
三人の思い出で、一番よく覚えてるのは、よく山に登って自然にふれたこと。
海に行って、禁止区域で大きな貝を毎年こっそりとっていたこと。
あのときが一番、家族で寄り添っとったなぁ。
けどもルール破ってでも、物事をやるクセがついたのは、実は親からの影響かもしれん。
それもこれも、どれも、思い出すほどありがたい日々だったなぁ。
高校の時は、反抗ばかりしとった。
仕事ばかりで、お母さんにもよくあたるお父さんのことが憎いと思った。
「俺は絶対、こんな父親にならんからな」て反面教師のように思っとった。そんな日々だった。
お父さんの苦労、お前は本気でわかっとったんか?
帰ってきたら、疲れてすぐ寝てしまう、お酒飲んでしまう、お父さんの本当の気持ち、
お前はどれだけわかっとったか!!なにが反面教師だ。
ガラス割って、カベを殴って、なにが伝えたかったんだ?
それを見る父や母の気持ちから、何を確かめたかったんだ・・・。
そんな中、もう手遅れだった。
お父さんは何か伝えたかったんだろうなぁ。
寒い冬の日が続いた。
お父さんはあっという間に逝ってしまって、
僕はあなたに、ちゃんとした感謝の気持ちも、まともな会話もすることができないままだった。
病院に行ったとき、お父さん、急に白髪増えたなぁ・・・って、お腹にささった太いチューブを見て、
父への申し訳なさがすごい勢いで、やってきたのを覚えてる。
せめて生きている間に、父を喜ばしたい、って、死ぬ気で勉強した。
何に向き合えばいいかよくわかっていなかったけど、とにかく必死に生きないと、
お父さんにもっと申し訳ない気がしたからだ。
それならもっと、毎日病院に行って、父と話をすればよかった。
今でも、何度も思い出す。病室で、お父さんが、きれたモルヒネの影響か、僕と母に、泣きながら
「ごめんな、ごめんな、ずっと遠くにバスで行っとった。ごめんな」と謝ってきたこと。
そして、こんすい状態の中、握った手のひらを強く握り返してきてくれたこと。
・・・。
思い出すたびに強くいきようと決心する。
ブラックジャックてマンガに、「二人三脚」ていうタイトルの、息子となくなった父の話があって、
ラストのコマの、二人三脚の後ろ姿がやけに印象強く残ってる。
あの日いらい、今日まで、そしてこれからの人生、僕はずっと父親と、お父さんと二人三脚で来たのだと思う。
そして、最近、やっとお父さんと面と向かって、まじめな話ができるようになったね。
今も、頑張りすぎて、ブレーキきかんくなるときがあって、体はそんなとき正直に反応する。
二人には、とくに体の面で、他のことももろもろあるけど、ずっと心配かけさせてるね。
二人のためにもちゃんと健康で生きてたくさん感謝していかな、親孝行していかな、
そしてイキイキと生きないといけん。そうしたい。
たぶん、お父さんは危なっかしい息子を見て、見えないところで声をかけてくれる。
その声が聞こえてくる気がする、生きるほどに鮮明に。
“生きる”こと―愛する人の中に宿ること。生きる意味はこれに尽きると思う。
僕は生ききったお父さんから、それをはっきりと教えてもらった。
残されたものをすべて引き受け、愛する気持ちを忘れない、お母さんからも。
お父さん、お母さんとともに、これからも、しっかり生きていこうと思う。
生きる意味を、喜びを、そして、人生の中でそそいでいくべき多くの愛情を与えてくれてありがとう。
僕のこれからの人生、すべてそのためにあるのだと思います。
これからも、ともに寄り添って、二人三脚で。ありがとう。

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2008年7月5日投稿 // 第1回ありがとういのちイベント参加 // 男性

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